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クラウドを武器にデジタル化を推進、「1人情シス」がいま脚光を浴びる理由

最新の機械学習技術の活用もクラウドなら素早く実現

 中古時計の販売、流通を行っているWatchfinderという英国の会社がある。中古時計を買い取り、メンテナンスをして販売するビジネスだ。同社の従業員数は120名ほど、ほとんどは時計の修理を行う職人だ。この会社は今、急成長しており年商は7000万ポンドを超える。急成長を支えているのが、Microsoft Azureだ。クラウドで成長に合わせシステムの拡張を行い、さらにはAzure Machine Learningを使って正確な見積もりの自動生成にも取り組んでいる。

 「時計の修理をするには、時計の状態に応じて修理の工数がかかります。状態をデータ化し、それを機械学習することで工数を正確に予測できるのです。工数が分かれば修理コストが算出でき、適切な価格で時計を買い取れます。結果、時計の買い取りを従来の4倍に増やしているそうです」(相澤氏)

 Azureを使う以前は、データセンターにシステムをホスティングし利用していた。ビジネスが順調に成長して買い取る時計が増えると、システムの拡張には手間もかかり変化に追随できない。それをAzureに移行したことで、運用管理、拡張の手間が大きく削減。IT担当者に時間的な余裕も生まれた結果、新たな機械学習の活用にもチャレンジできたのだ。

 また、Azureに移行したことで、テレビCMなどを使ってプロモーションをした際の一時的なトラフィックの急増にも問題なく対処できるようになった。少人数の情報システム部門でも、クラウドを活用することで急成長の会社のビジネスを支えられる。さらにクラウド上の機械学習機能などが、新たなビジネス成長の武器にもなっている事例と言える。

 これらの企業の例のように、まずはITシステムの運用管理、拡張の手間を削減するため、さらには災害対策などのBCPの実現をきっかけにクラウド化する。クラウド化すると1人情シス状態でも、安定的なITシステム基盤ができ上がる。そうなれば運用管理も楽になり、1人情シスであっても新たなチャレンジをする余裕が生まれ、BIによるデータ活用や機械学習による予測分析など新たなチャレンジができるようになる。

 「アイデアさえあれば、それを実現するために必要な道具はクラウドに全て揃っています。システムを1から作らなくても機能を組み合わせてすぐに実現できます。1人情シスでも無理なくできる。むしろ1人情シスだからこそ素早く判断し、新しいチャレンジがすぐにできる。そんな取り組みをしている企業が、今、急成長する傾向にあるようです」(相澤氏)

 もちろん、構築パートナーとも良い関係を作り、クラウド上で素早く仕組みを作る体制も必要だろう。適材適所でクラウド、パートナーを選ぶことで、1人情シスでも最新のITを武器にして新たなビジネスにチャレンジし、大きな成果をあげることができる。クラウドがあることで、1人情シスは決してネガティブな話ではなくなっていると、相澤氏は強調する。

 こうしたチャレンジで成果を上げ、1人情シス担当者の取り組みが社内で評価され、取締役に出世するケースも実際に出てきたという。企業のデジタル化が進むなかで、クラウドを起点とする最新のITを理解できる経営者が生まれれば、その企業が強くなるのも当然かもしれない。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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