コグニティブの価値がビジネス面でも評価されてきている
逆の見方をすれば、IBMのクラウドはデータ、コグニティブが加わることで、極めてユニークな存在だというのがIBMの主張だ。単にインフラを安価に素早く用意できるだけでなく、膨大なデータを集め、それにコグニティブ技術を適用して知見を導き出し、ビジネス現場などでの意思決定に貢献する。ここまでのことがクラウドを使って実現できなければ、いくらたくさんのデータを集められるクラウドでもそれには意味がないと言い切るのが、IBMのメッセージでもある。
しかしながら、ここのところのIBMは旧来のサーバーのビジネスを切り離し、そのほかのソフトウェアのビジネスやコンサルティングのビジネスもある意味転換期にあり、業績の数字はずっと上向いていない。そのため、IBM CEOのジニ・ロメッティ氏の評価は、ニューヨークなどの証券業界からはかなり低かったと聞く。
しかし、ここ最近はその転換期の厳しいビジネスの状況を堪え忍び、新たなWatsonのコグニティブビジネスにかけてきたことがやっと回り出したと受け取られ始めているようだ。結果、ロメッティ氏の評価はむしろ上昇気味なのだとか。そんな中での今回のInterConnectだ。聴衆に漂うムードも疑心暗鬼の色が薄れ、期待の色が濃くなっているような気がした。
クラウドについては、IaaSのところを中心としたビジネスでAWSとの真っ向勝負はすでに厳しいだろう。しかし、Watsonを活用するクラウドという切り口なら、確かにIBMに勝機がある。やはりコグニティブ部分の優位性は、それをビジネスで活用できる切り口が明らかになってくればくるほど、IBMは2歩も3歩も、あるいはもっとたくさんのリードを持つ存在なのは間違いなさそうだ。
その状況で、IBMはもちろんクラウドのインフラにも投資を続けている。IBM Cloudのクラウドプラットフォーム担当 フランシスコ・ロメロ氏は、「今年は12以上のデータセンターを新たに開設予定で、クラウドのインフラは急激に拡大しています。ネットワークも拡大しており、ストレージのプラットフォームも拡充しました」と言う。これらの投資は、主にハイブリッドクラウドのワークロードを最適化するためのものとなっている。その上で、IBMが自社で提供しているBluemixやSaaSなどのサービスを最適化するためにも、投資を続けているとのことだ。