プライベートクラウドにおける新たな課題
まず、プライベートクラウドを検討する場合、基盤となるインフラからの設計が必要となるが、プライベートクラウド化を意識したインフラと従来のサーバ仮想化インフラとは大きな違いがある。EMCジャパン クラウドプラットフォームスペシャリスト 平原一雄氏は次のように説明する。
「サーバ仮想化はハードウェア標準化とハイパーバイザーを活用し、仮想マシンレベルで集約率を上げますが、運用で見れば実は従来と大きく変わらないのです。ある意味、インフラの刷新に過ぎません。一方、プライベートクラウドでは仮想マシンの作成はサービスポータル経由で企業内ユーザーが直接行うようになるため、使い勝手や運用は大きく変わります。このため、プライベートクラウドの構築には誰もが自由にITリソースを消費できるようにハードウェアインフラを抽象化したリソースプール、必要とする仮想マシンを一気通貫で作成するための自動化オーケストレーションが必要になります。さらに、全体の基盤だけではなく、その上に立て付ける利用者のためのサービスも検討しないとなりません」
そうなると、必然的にIT管理者の役割も変わってくると言う。サーバ仮想化の時代、IT管理者はITリソースを正しく提供することだけに注力していれば良かったが、プライベートクラウドの時代では利用者に満足できるITサービスをいかに提供できるか、つまりユーザビリティ向上への注力が求められるようになってくる。
企業でプライベートクラウドを設計するには「全体を見渡すことが大切」と平原氏は強調する。インフラを刷新するだけではなく、サービスポータルの設計、ITサービスの立て付け、オーケストレーションの実装も行わないと、使えるプライベートクラウドにはならないということだ。