クラウド構築の概念を変える!
さて、このEHCのようなハイブリッドクラウドを構築するとなると一般的には1~2年がかりのプロジェクトとなる。しかしEHCならインフラ構築とユーザーポータルなどのクラウド化の仕組みも含めて2か月~半年で済むという。平原氏は「確実に動く完成品をお客様にお届けするための秘密がDell EMCのハイブリッドクラウドプラットフォームという考えです。これまで『組み立てる』ことに費やしていたノウハウと時間を『買う』という逆転の発想です」と話す。
ハイブリッドクラウドプラットフォームの特徴は、インフラ部分は時間をかけず、実績のあるDell EMCコンバージドインフラをベースにし、その堅牢なインフラの上に標準化された使い勝手に基づいてDell EMCが開発・検証済みのクラウドソリューションセットを立て付け、それを一つの完成品として提供しているところだ。
このためEHCは工場で全てのハードウェアを組み上げ、ソフトウェアの多くも事前導入と設定ずみ。独自設定するものは設置場所で作業することになるが、これも多くが標準化されたスクリプトで自動化されているため、作業ミスなく短時間で済む。手作業があったとしても、そのための手順書も標準化されている。機能要件追加のためのアドオンモジュールもEHCと一体で開発、検証ずみなので、企業サイドは開発と検証に時間を費やさなくて済む。このアドオンモジュールはバックアップや災害対策など多数の事例をもとにモジュール化しており、実用的なものがそろっている。自動化のためのワークフローもテンプレート化されている。
プロジェクト個別で部品を集めて組み立てるのとは異なり、ベンダーが標準化したエンジニアド製品なので、ベンダー側で徹底的に検証が行われていることもメリットと言える。平原氏も「多大なエンジニアリソースを継続的に投資し、プラットフォームレベルで検証しています。ソリューションがきちんと動くことにフォーカスを当てています」と胸を張る。
アメリカのある顧客ではEHC導入まで半年で済んだという。例えばコンバージドインフラ製品(ハードウェア)の納入設置からIaaS機能の導入までは2週間で済んだ。既存仮想マシンのマイグレーション、トレーニング、多様なITサービス導入の準備を経て、4か月目には本番サービスのテストが開始され、残り2か月で統合検証と引き継ぎという流れだったという。
「海外のお客様だと自分たちのやり方に拘らず、標準に乗るのが早いというのはありますが、ハイブリッドクラウドを半年で導入するのは夢物語ではありません。さらに安心のワンストップサポートがあります」と平原氏は付け加える。
いろんなベンダー製品を組み合わせると、数年にわたり使い続けるための管理と問題の切り分けにも苦労する。何か1つバージョンアップするだけでもソリューションとしての不具合発生回避の整合性確認は大変な手間となるが、EHCではソリューションのロードマップを持っている。機能拡張のロードマップをきちんと定め、各構成要素の保守期限、ソフトウェア、ファームウェアのバージョンアップまでトータルで管理する。「Dell EMCが1つの窓口となり、VMwareやシスコ製品も含めて問題解決にあたっていきます」と平原氏は言う。これは運用側としてはかなり安心できるのではないだろうか。
繰り返しになるが平原氏は「ハイブリッドクラウドプラットフォームは単なる組み合わせではありません」と強調する。ハードウェアからソフトウェアまでのIT構成要素を、Dell EMCがトータルで設計、開発と検証までを行うことで、ユーザーは余分な手間をかけることなく短期間でビジネスメリットを享受できる。
残るはコストだ。平原氏は「正直、EHCはお高いソリューションでした」と言う。これまでは最低でも500VM規模で数億円はしていた。ところが間もなくハイパーコンバージドインフラをベースにしたミッドレンジ向けのものも提供開始になるとのことだ。「これなら200VM規模、数千万円単位からになります。これなら単なるコスト削減ではなく、俊敏性向上によるビジネスメリットを含めたトータルの効果を見極めていくこともできるかと思います」と平原氏は言う。EHCの敷居がぐんと下がり、プライベートクラウドはより現実的になってきた。
最後に平原氏はあらためてDell EMCのハイブリッドクラウドソリューションについて特徴を挙げた。「ハイブリッドクラウドプラットフォームの手法で導入を成功に導きます。メリットはDell EMCが設計や構築作業を事前に行うため導入期間を大幅に短縮できること、多大なリソースをかけて事前検証しているためリスクを低減できること、またDell EMCがソリューションをまるごとサポートするのでシンプルかつ安心して運用できることです」