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あらゆる人がデータを使いこなせる時代がもうそこまで迫っている――Tableau 田中香織氏

すべての人のデータ理解に有用な「視覚化の力」

 田中氏の創造性を引き出すきっかけとなったTableauは、なぜ、そのようなことができたのか。田中氏は「すべての人がデータを理解できるようにすることがTableauの基本コンセプトだったから」と分析する。人は好奇心を生まれながらにして持ち、わからないものに対して働きかけ、そこから何か情報を得ようとしてきた。さらに誰もがそれぞれ異なる能力を持ち、得意とするものを持ち、そうした個々の力を生かしてコラボレーションすることで新しいアイディアを生み出し、それぞれ関わることで満足を得てきた。今まさに、データを理解することが世界を理解することにつながりつつある中で、そのデータをあらゆる人が理解し、そこから新たな創造性を発揮できる時代にある。

 

 「しかしながら、データはどんどん増え続け、その本質を捉えることが難しくなりつつあります。そこで重要になってきているのが、視覚化=ビジュアライゼーションです。もともと人間には生まれながらにして好奇心とともに、視覚的な認識力が備わっています。それを活かしながら、自然にデータの状況を把握させることがTableauの役割なのです」

 田中氏はそのように語り、実際に視覚化の効果についてデモンストレーションを行なった。はじめに、数字の羅列を見たあとに、3の文字だけに色をつけてみる。それによって、私たちはすぐに3がある場所や数量まで一瞬にして把握できることがわかるだろう。この現象について、田中氏は脳の働きによって起きるものだと解説する。

 脳の記憶のプロセスには、Sensory、Short-Term、Long-Termの3つがあり、その中でもSensoryは考えなくても無意識に反応が生じるものだ。前出の色がつけられた3を一瞬で認識できたのは、この能力のおかげとなる。いくつかの視覚属性をうまく活用することでこのSensoryに効果的に働きかけることができる。世の中のすべてのチャートはこれらの視覚属性の組み合わせにより成り立っており、上手く活用できているものほど直感的にデータが示すものを伝えることができるというわけだ。

 このような視覚化が簡単に行えるべき理由として、田中氏はShort-Term記憶の特性をあげる。Short-Termはその場で考え、すぐさま認識できるという利点がありながら、しかしながら数秒後には忘れてしまう、また他の情報が入るとかき消えてしまうという弱点も持っている。多くのものをキープしておくことができないわけだ。

 たとえば、ある数字を覚えておかなければならない状況で、筆算をするとしよう。すると覚えておくべき数字がじゃまになって計算に集中できないという事象が発生する。しかし、その数字を紙に書いておけたらどうだろう。筆算という作業に集中して効率があがる。また、クリエイティブな作業においても、一度頭の中のモノを取り出して考えることでそれを見て再度理解を深めることができ、他者とも共有できる。

 つまり、人は思いついた様々なアイディアをどんどん外にアウトプットして、書き留めることで、自分の頭でしか考えられない次の新しいアイディアを考えられるようになる。そのためには、そのアウトプットができるだけ簡単にできるようにすることが必要だ。

 たとえば、鉛筆で線を書く時、考えたように線を引くことができ、フィードバックもシンプルであるものをあるように理解できる。しかし、データを見るときにはどうだろう。ともするとテクノロジーからはそうした自然なフィードバックが得られないことも少なくない。そうなったとき、自分が何を知りたかったのか、思考が離れてしまう。つまり、アウトプットもフィードバックも、自然であることはとても重要なこと。線を書くときのように、自然な動作の中で理解できることが求められる。

 「大量のデータを眺めても直感でそれが意味するものを理解できる人はほぼいません。つまり、自然な動作でデータを勝手に視覚化して、直感的に理解できるようにしてくれる新しい道具が必要です。そうした理由で生まれたのがTableauなのです。Tableauはフランス語で“絵”という意味です。キャンパスに絵を描くように表現することができるのです」

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人の自然な行動に寄り添い、おすすめの操作やデータをリコメンド

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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