継続的に進化してきたシステム
グローバル化、消費者ニーズの多様化など、ビジネスをとりまく環境が日々変化している。日立製作所ソフトウェア事業部 AP基盤マーケティング部の尾花学氏は「企業が自らの価値を高め、持続的な成長を維持するためには、環境の変化に対応するだけでなく、ビジネスイノベーションが求められる」と語る。そして、その要求を実現できるアーキテクチャとして注目されているのがSOA だ。
尾花氏は「実際に企業がSOAなどによりイノベーションを実現していくには、様々な前提と条件があることを理解しなければならない」と指摘する。その理解のためにまず、ビジネスモデルの進化に伴い、情報システムも進化し続けてきた経緯を整理してみたい。尾花氏が事例として挙げたのは、ビデオレンタルビジネスである。
従来のビジネスモデルでは、顧客が来店して観たいDVD を探し、在庫があれば持ち帰って自宅で視聴し、観終わるとまた店に行って返却していた。ここでレンタル業者の情報システムに求められるのは、財務管理、在庫管理、顧客管理の機能だ。
では、レンタル事業者のビジネスモデルでは、どのような進化が考えられるだろうか。例えば「顧客が目的のDVDを探す手間の簡略化」と「品切れに伴う顧客の再来店ストレス撲滅」を実現することにより、サービスレベルの向上を目指す。同時に「来店勧誘のための広告費用の削減」と「分散している商品の在庫管理の集約」により業務効率向上を目指すとする。
そこで考えられるモデルは、顧客の来店を不要化することだ。自宅から電話やネットを通じて検索し、借りたいDVD があれば発注する。すると運送業者がDVD を届けてくれ、返却は郵便ポストに入れればいい。
そこでまず必要なシステムの進化が、商品検索と注文作業のネット対応だ。さらに運送業とのシステム連携を行う。配達の迅速化、即日化の仕組みを構築して「すぐに観たい」という要望にも応える。来店不要モデルの拡充と同時に店舗網を整理統合し、在庫管理も大規模対応可能とする。
さらに、デジタル家電時代に対応したシステムとして、ネットを通じたコンテンツ配信への対応も検討されるだろう。そこではDVDの配送・配達管理から、セキュリティを含めたアクセス管理対応が必要になる。
求められているのは、経済的効率化の追求や、多チャンネル化、若者の車離れといったライフスタイルの変化への対応だ。つまり、顧客のニーズや様々な環境の変化に伴い、ビジネスモデルは進化していく。さらに検索の高度化やコンテンツ配信などは、単なる環境が変わったことへの対応ではなく、ニーズを先取りした新たな価値の創出とも言える。それでは、そうしたイノベーションを可能にするシステムには、何が求められるのだろうか。