「Oracle Database 23」はCloudの“c”から“ai”に
Oracle Database 23aiの注力分野は、AIと開発者、そしてミッションクリティカルの3つだ。ミッションクリティカルは、Oracle Databaseが長きにわたりターゲットとしてきた領域であり、23aiでも踏襲された。また、堅牢なだけでなく、開発者がより使いやすいようにアプリケーション開発を容易にするための機能を数多く揃えていることも強調する。
開発者に優しいデータベースだとする大きな理由が複数のデータモデル、データタイプ、データワークロードを1つのデータベースで扱える「コンバージド・データベース(Converged Database)」のコンセプトだ。Oracle Databaseでは、リレーショナルデータはもちろん、ドキュメントやKey-Value、Spatial、Graphなど、さまざまなデータタイプのワークロードを1つのデータベースで対応できる。これにより開発者は複数のデータベースのスキルを持つ必要もなければ、その管理も必要ない。バックアップやセキュリティの担保なども、1つのOracle Databaseだけ対応すれば良いだろう。その分だけ開発者やDBA(データベース管理者)は、アプリケーションの開発・運用に注力できるというわけだ。
そして、コンバージド・データベースの対応範囲をベクトルデータにまで拡大し、“AIのためのデータ活用プラットフォーム”として進化したのがOracle Database 23aiとなる。「AI Vector Searchは画像やDNAの塩基配列など、すべてのデータをベクトルデータに変換して取り扱えます。これにより、たとえば膨大なアルバムの中から似たような写真を容易に探し出せます」とOracle会長兼CTOのラリー・エリソン氏は話す。AI Vector Searchは、データの中身を検索して類似点を見つけ出せるという。ベクトル検索では、データが完全に一致する必要はない。ドキュメントの内容が似ていれば、それを見つけられる。
もちろん、ベクトル検索自体は新しい技術ではない。ベクトル化した大規模なデータをOracle Databaseに格納して取り扱えることが画期的であり、これにより企業が持つデータから類似性の高いデータを抽出でき、容易に大規模言語モデルと連携可能だ。
市場には既に、ベクトルデータを取り扱うための専用データベースもいくつかある。一方、エリソン氏はベクトル・データベースを独立した製品として提供するべきではないと主張する。たとえば、かつてXMLデータを扱う専用のXMLデータベースがあったように、新しいデータタイプが出てくると、それを扱う専用の仕組みが登場する。とはいえ、「XMLデータベースは長続きしませんでした」とエリソン氏。データタイプごとにバラバラにデータベースを用意するのではなく、すべてのデータは1つの場所にあるべきだ。そうすることで、予想ができないようなユーザーからのクエリにも容易に答えを返すことができる。
重要なことは、欲しいデータを容易に見つけられることだ。バラバラのデータベースでこれを実現することは簡単ではない。すべてのデータを1つのデータベースに保管すれば、欲しいデータは容易に見つけられる。
そして現状、膨大なデータを学習した基礎的な大規模言語モデルも存在するが、そこには個人の銀行口座の記録や個人的なメールの情報などは含まれていない。そこでOracle AI Vector SearchとRAGを組み合わせることで、個人のデータなどを含めた形で大規模言語モデルを用い、最適な回答を返せるようになる。この仕組みならば、データベースに登録される最新データを含めて回答を生成可能だ。「データベースと大規模言語モデルの組み合わせは、ユーザーに素晴らしい体験を提供するでしょう」とエリソン氏は強調する。
企業のデータを容易に連携させる仕組みは、別途ベクターデータベースを導入することなく、Oracle Databaseを23aiにすることで実現できる。既にOracle Databaseを利用しているならば、この機能を使うのに追加料金は発生しない。