統合基盤にSnowflakeもTreasure Dataを採用、ビジネスサイドがCDPを持つ価値とは
日産自動車が求める「リアルとオンラインを融合し、最高の顧客体験を提供する」ためには、各システムに格納されたデータを統合し、的確かつスピーディーに顧客理解を図るための分析手法を提供することが必要だ。その第一ステップとして、部⾨横断で統合された顧客データベース「C360」の構築がスタート。様々な製品を検討する中、「顧客を深く知るという目的において最も優れている」との評価のもと「Treasure Data CDP」を選択した。
このとき、北原氏らビジネスサイドとシステムを管理するIT部門が適切に連携していくために、技術的知見とビジネス理解の両方をあわせ持つインキュデータが仲立ち役として参画。北原氏は「IT部門だけでなく、ビジネス部門も技術的要件を理解した上で、自分たちの要望を主張できる状態を作る必要があった。そのため、技術的知見とビジネス理解の両方を持つ第三者の存在が必要であり、Treasure Data CDPを活用するためのコンサルティングをインキュデータに依頼した」と語る。
北原氏らビジネスサイドが目指す理想は、一人ひとりのお客様について深く理解し、ライフステージや購買行動など時間軸での変化まで捉えること。実現したいゴールは同じではあったもののビジネスサイドとIT部門の課題は異なり、議論を重ねる必要があった。
コンサルタントとして参画したインキュデータの末留氏は、「どの会社にも要件や機能だけで決まらない部分がある。さまざまな面から検討して最適解を出すためには、それぞれのステークホルダーが互いの主張を理解することが必要。そこで、当社からもエンジニアやマーケターを含むチームを組んで支援を行った」と語る。
既にTreasure Data CDPの導入が決まっていたとはいえ、統合データ基盤はSnowflakeで別に構築されていた。IT部門にとっては同じ目的のものが複数存在することは、管理の負荷・コスト面から容認できるものではない。しかし、ビジネスサイドにCDPが存在し、自由にデータに触れる環境があることに大きな意味があると北原氏。その理解を得るためには、定性・定量的な根拠を示し、存在価値を説明する必要がある。
末留氏は、「既に存在する統合データ基盤にビジネスサイドが合流するという方法もある。しかし、日産自動車の場合には、ビジネスサイドは外部委託を含め多くのメンバーがクエリやマクロを書くなど、自分たちで分析・開発ができる力が備わっていた。それならば、IT部門にすべてを委ねるよりも自分たちでCDPをコントロールし、活用する方がスピードと精度も高まるはず。そこで第三者からのアドバイザリーとして、その価値を伝えた」と話す。
そうした客観的な視点も得ながら、IT部門が懸念するセキュリティやガバナンスなど、各種リスクを回避する方法についても、建設的な議論を重ねていった。IT部門も積極的にビジネスサイドが求める要件を実現する方法を提言してくれるなど、チーム一丸となって共通のゴールへと向かっている。