2024年の熱狂と課題、そして2025年への展望
2024年は、エンタープライズITの世界において、生成AIの存在感が際立った1年だった。取材現場では、生成AIの話題を取り上げない日を探すほうが難しいほどで、その影響力は広範囲に及んだ。
しかし、記者が生成AIの話題に食傷気味になっていることも事実だろう。最先端のLLM(大規模言語モデル)の精度向上の競争は、OpenAIやGoogleといった限られたプレーヤーによる寡占状態となりつつある。この高額なゲームに参加できるのは、潤沢な資金を持つ一部のベンダーに限られてしまう。
一方、大規模かつ高精度な汎用LLMだけでなく、特定の言語や領域に特化したLLM、小規模ながらも高精度な結果を出せるLLMへの注目も高まっている。企業における生成AIの業務適用は、当初はOpenAIのChatGPTを全社導入する発表が相次いだが、導入後の利用率は想定を下回り、ROIを疑問視する声も出始めた。
一部では、PoCの結果が良好で、コールセンターのAIボット化などの実用的な事例も現れはじめているものの、汎用的な生成AIを企業が十分に活用し、メリットを享受している例はまだ少ない。
その中、あらゆるサービスやソフトウェアに生成AIが組み込まれつつあり、ユーザーが意識せずとも生成AIの恩恵を受けられる状況も生まれている。企業がビジネスで本格的に生成AIを利用するならば、RAG(Retrieval Augmented Generation)が不可欠との流れも確立しつつあるだろう。
とはいえ、RAGを本格導入するためには、企業内に存在する情報が生成AIに“渡せる形”で整理されている必要があり、多くの企業がその課題に直面している。RAGはまさに成功のためのノウハウ蓄積の段階であり、より容易にRAGを実現するためのツールの登場が待たれる。