インタビューを終えて
松信氏は本業以外にも、MySQLに関する記事や書籍を多く執筆している。筆者はこれまで何度か松信氏の原稿を拝見する機会を得ているが、お会いするのは今回が初めてだった。理路整然とした、それでいて読みやすい文章そのままに、インタビューに対しても丁寧に、言葉を尽くして答えてくれた姿が印象的だった。国内、海外を含めてセミナーで講演する機会も多い同氏だが、そのわかりやすさには定評がある。一流のエンジニアは伝える能力もまた一流なのだろう。必要に迫られて自力で身につけた英語力も折り紙付きだ。
念願のサービスカンパニーで仕事をしている松信氏だが、これまで経験してこなかったチャレンジに向きあうこともある。
「サービスを提供するとなると、予算や開発期間、データ量、性能要求、ハードウェア納期、運用の手間など様々な制約条件を踏まえて適切な判断を下す必要があるため、特に大規模になればなるほど最適な設計が難しい。データベースの教科書通りでは、ソーシャルサービスにあったシステムはなかなか作れません」
実はアプリケーションとインフラの両方に精通したエンジニアはそれほど多くない。ソーシャルならではのニーズに対応するため、アプリケーションサイドの視点を日々勉強中だという。
「データベースの用途が大きく拡がっているのを強く感じます。だからこそ自分の幅も拡げていきたいですね。MySQLのエキスパートとしてだけではなく、データベースのエキスパートとして認められるようになるのが今の目標です」
―はたして5年先、10年先にはどんなスーパーエンジニアになっているのだろうか。
■■■ Profile - MySQL Geek■■■
松信嘉範 MATSUNOBU Yoshinori
株式会社ディー・エヌ・エー(http://dena.jp/)
システム統括本部 IT基盤部 インフラ担当プリンシパルアーキテクト
MySQLエバンジェリスト
東京都中野区出身の32歳。世界有数のMySQLシステムを抱えるDeNAにて、MySQLスペシャリストとしてインフラ構築にあたる日々を送っている。
データベースエンジニアとして心がけていることは、「ハードウェア環境を揃えて手を動かして検証すること」。つながりのある同じ業界人は奥一穂氏(DeNA)など。
東京大学工学部時代からデータベース周りの研究を行ってきた。得意なプログラミング言語は大学時代からJava。MySQLはC言語で書かれているため、かなり苦労を伴った。C言語は書けなくても読める程度の能力は必要だと実感している。趣味はロールプレイングゲーム(ペルソナ3, 4やFF10,12等)。
「学生時代や社会人になったばかりの頃と比べると、技術領域なり国内外の労働事情なり、当時には見えなかったものが色々と見えるようになりました。当時は学ぶ必要はないと思っていたこと(C言語やライトウェイト言語や英語など)が、それからだいぶ経ってから必要性に気づくようなことがよくありました。何が大事かを未熟なうちから判断することは難しいので、若いうちは選り好みせず幅広く学ぶとともに、本質的なスキル(データモデリング等)を身につけることも大事だと思います」
Twitter: http://twitter.com/matsunobu