[4]予算の設定
プロジェクト予算の設定には、2つの予備費について考えておかなければなりません。それは、コンティンジェンシ予備とマネジメント予備です。
・コンティンジェンシ予備:発生することが予測できる既知のリスクに対する予備費で、コストパフォーマンス・ベースラインに組み込まれ、EVMの対象になります。プロジェクトマネージャが、自分の裁量で使用できます。
・マネジメント予備:明確に発生すると予測できない未知のリスクに対する予備費で、コストパフォーマンス・ベースラインには組み込まれず、EVMの対象になりません。プロジェクトマネージャは、自らの裁量でこの予備費を使うことができません。
[5]品質マネジメント
(1) 品質マネジメントには、品質標準を中心にして、次の3つのプロセスがあります。
●品質計画
品質標準を特定し、品質尺度を決めるとともに、品質マネジメント計画書を作成する。
●品質保証
品質マネジメント活動が、体系的、計画的に実施されているか否かを監査する。
●品質管理
出来上がった要素成果物が、品質標準をクリアしているか否かを、ツールを使用して評価し、クリアしていなければ手直しをする。
※品質管理は、通常、スコープ検証の前に実施するが、並行実施することもあります。品質管理は、要素成果物の正確性に焦点を当て、スコープ検証は、要素成果物の、公式な受け入れに焦点を当てるプロセスです。
スコープ検証は、品質管理と一緒に勉強しないと、なかなか理解できないといわれています。
(2)PMBOKは、近代的品質マネジメントのポイントとして、次の点をあげています。
●顧客満足:(デュラン)
・要求事項への適合:プロジェクトは、所定のものを生み出さなければならない。
・使用適合性:生み出される製品等は、真のニーズを満足しなければならない。
●検査よりも予防:(クロスビー)
近代的品質マネジメントに「品質とは、計画、設計、作り込みによって達成されるものであり、検査によってではない」という理念がある。一般に、欠陥予防の コストは、検査により発見された欠陥を是正するコストより、はるかに少ない。
●経営者の責任:(デミング)
成功するために必要な経営資源を提供する責任がある。
●継続的改善:
・計画、実行、確認、処置(PDCA)サイクルは、品質改善の基準。
・母体組織の品質改善運動は、成果物の品質と、プロジェクトマネジメントの品質を改善する。
・プロセス改善モデルには、マルコム・ボルドリッジ、OPM3、CMMI等がある。
●品質コスト:
品質に関する全ての作業コスト。返品、保証に対するクレーム、リコール対策は、品質の運用コストに影響を与える。品質改善への投資、とくに、欠陥予防と評価への投資は、多くの場合、母体組織が負担する。なぜなら、プロジェクトは、その投資の成果を受取るほど長い期間存在しないため。
(次ページへ続く)