OracleからPostgreSQLのスペシャリストへ、後進育成も
関電システムソリューションズはいま厳しい経営環境の中にあり、これを乗り切るために「競争力強化とコストダウン」を掲げている。DBMSについてもコストの観点から今までの商用製品では厳しい。そのため、松添さんは「Oracleは成熟期である一方、PostgreSQLは導入期から成長期にさしかかったところ」と判断、PostgreSQLに目を付けた。現在のPostgreSQLの性能・機能は、商用製品と比較してほとんど遜色ないのでコストパフォーマンスが高い、また、エンジニア視点で見ると、PostgreSQLはOracle Databaseとアーキテクチャが似ていて理解しやすいという。Oracleの技術者にとってPostgreSQLはなじみやすいということだ。
松添さんはPostgreSQLへの本格的な取り組みを始めた。既にLPI-Japanが運営している「オープンソースデータベース(OSS-DB)技術者認定試験」も受験し、合格している。また、PostgreSQLをシステムに適用する際の手順等も整備した。今はPostgreSQLの案件獲得を目指してさらにノウハウを蓄積し、それを社外に発信することで自社のプレゼンス向上へとつなげようとしている。
6月7日には大阪で開催したPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムセミナーに登壇した。テーマは「OSS-DB研究会」。関西でPostgreSQLを盛り上げようと、TIS社と関電システムソリューション社が共同で立ち上げた研究会である。前年度の取り組み内容を紹介し、そこで得られた知見を発表した。ユーザに特に関心の高いOracle DatabaseからPostgreSQLへの移行ツールについて、パラメータレベルまで具体的に紹介し、好評を博した。
現在ではよりエンタープライズシステムでの移行を促進していくため、継続的にPostgreSQLの研究・検証を進めている。移行費用から性能まで幅広くノウハウを蓄積しているところだ。松添さんは「富士山よりも西ではPostgreSQLといえば関電システムソリューションズと言われるようにしたい、そして、西日本でNo1のシステムインテグレーターを目指す」と話す。
これまでエンジニアとして自身のスキルを伸ばし、また自社の競争力強化に余念がない毎日を送っている松添さんだが、ほかにも考えていることがある。それは後進の育成である。
新人時代、松添さんは先輩から「どんくさいな」など厳しい口調で叱責されることも珍しくなかった。そこに愛情がこめられていたとしても、今は威圧的な指導では教育効果は薄いという考えが広まりつつある。近年スポーツの世界における動きがまさにそうだ。松添さんの年代は自分が教わったような方法ではなく、今の若手に合う効果的な教え方を模索しているところだ。
「お互いが気持ちよく協力し合えるように持っていくためのコミュニケーション能力を身につけていきたいです。仕事をするのは機械ではなく、人間ですから」
スパルタで心が折れそうになりつつも努力を続けてきた松添さんだからこそ、人間の弱さやそれを乗り越えるための強さも分かるのだろう
■■■ Profile ■■■
松添 隆康 MATSUZOE,Takayasu
1995年、関電情報システム株式会社(現在の関電システムソリューションズ株式会社の前身)へ入社。入社後、約10年間は事務処理系システム開発・維持運用業務に従事し、データベース管理業務に興味を抱く。その後、約3年間はデータベースを中心とした各プロジェクトの基盤整備業務に従事し、Oracle Databaseの社内第一人者となる。
現在、OracleDatabase、PostgreSQLのデータベース関連業務を中心に活動中。ガイドラインの作成、全社のプロジェクトチームへの技術支援、OracleDatabase社内研修の講師、社外講演などを行う。
日々たゆまぬ努力を忘れず、業界で一目を置かれる存在を目指している。週末は、二人の子供(4歳の娘と1歳の息子)の面倒をみる、イクメンとして活躍中。