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妹尾堅一郎氏が語る「ビジネスモデル乱世に生き残る条件」

アップルは「複合+複層」の価値形成モデル

― アップルは以前はクローズ戦略の企業と見られていましたが、実はオープン&クローズが非常に巧みだといわれます。

妹尾 アップルのやり方は基本的には変わらない。周辺の企業の戦略が変化してきているのです。アップルはクローズではなく、これも一種のクローズ&オープンです。どこをオープンにしているか、内部オープンです。どういうことか。私は、「複合体+複層的価値形成モデル」と呼んでいます。

 機器のレイヤーではアップルは複合体を作った。iPod はメディアです。レコード、カセット、CD、MDと変遷してiPodの時代になった。この変化は10 年単位で世代を構成しています。EP/70 代、LP/60代、カセット/50代、CD/40代、MD/30代、iPod/20 代という具合に、世代別に10年おきにメディアの変化が起きています。カセットまでがアナログでA 面、B 面があります。今の若い人にB面というメタファーは通じない。AB がなくなったから、CDになった(笑)。

 実は、さきほどの10 年ごとのリストの中で、iPod だけが一般名ではなく商品名なんです。これが本当のイノベーションを意味している。ゼロックス、味の素、ホッチキスなど、イノベーティブな製品は、商品名が一般名化するということです。

 では、逆にiPodを一般名詞でなんと呼べばよいのか。店頭では携帯デジタル音楽プレイヤーと呼ばれていますが、実際は音楽だけではないし、プレイヤーといわれているがメディアでもあります。レコードからMD までは、メディアとプレイヤーは別でした。iPod ではじめて、メディアとプレイヤーが融合されたといえる。なおかつダウンロードしたコンテンツのストレージ機能も持っている。つまりiPod は「ストレージ+メディア+プレイヤー」です。複合体の価値形成というのはそういう意味です。

 もうひとつは「複層」的ということ。iPod はiTunesStore と一緒になって、サービス・レイヤーとモノ・レイヤーで価値形成してきた。なおかつ2011年の6 月スティーブ・ジョブズの最後のプレゼンで、彼はパソコンのレイヤーからiCloudへのレイヤーへ重心を移行させると宣言した。クラウドというサービス・レイヤーが一気に加速されたわけです。これがアップルの複合、複層的価値形成モデルの全体像です。こういう産業の価値形成の全体像の透視図が、シャープやソニーなど日本の製造業に作れなかったということです。また、アップルはこのモデルを垂直統合で作りましたが、彼らの最大の競争力は40 数万種類のアプリケーションです。

 これらは彼らがつくったものではなく、サードパーティが作ったものです。そのWin-Winの関係を可能にしたのが「内部オープン」です。すなわち、自分の生態系の中にオープン領域を作り、そこに外部を引き込んで競争力を生み出した。

 これはインテルとまったく同じです。インテルは自分たちのMPU のパソコン市場を作るためにマザーボードを開発したけれど、マザーボードの技術はすべて台湾企業に公開した。

 オープンとクローズの使い分けと組み合わせという意味では、まったく同じですよね。

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ジョブズは織田信長だ

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、EnterpriseZineをメインにした取材編集活動、フリーランスとして企業のWeb記事作成、企業出版の支援などもおこなっている。 ...

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